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2018/04/13

ビジネス書の戦略は本当に役に立つのか?

ビジネス書で紹介された戦略を自社に導入し、「変革を目指す」あるいは「業績向上を目指す」という多くの経営者・経営幹部がいます。競合他社に勝つために、マイケル・ポーターの「競争の戦略」や、W・チャン・キムとレネ・モボルニュの「ブルー・オーシャン戦略」を学習し、自社でチャレンジする多くの方々がいます。

しかしながら、このような戦略を導入して、期待通りの成果を上げた会社は、残念ながら少ないと思われます。ビジネス書の戦略を鵜呑みにして、自社でその戦略理論をそのまま実践しても、なかなかうまくいかないのです。だからといって、「戦略は実務の役に立たない」と決めつけてしまうのは早計と言えます。戦略を導入してうまくいかない根本的な理由は、どこにあるのでしょうか。

経営戦略の父と呼ばれているイゴール・アンゾフは、「どんなに優れた戦略を策定しても、戦略を実行する組織能力が伴わないとその戦略は失敗する」と言いました。「戦略の策定」よりも、「戦略の実行」がより重要だと説きました。アンゾフの「戦略は組織に従う」という言葉は戦略論の世界ではとても有名です。

最近の経営学では、戦略を導入してうまくいかない理由として、「戦略の適応」に誤りがあると指摘しています。例えば、マイケル・ポーターの「競争の戦略」は万能ではないのです。この戦略は、「特定の業界・市場」で、企業がどのように戦うかを示しています。特定の業界・市場でしか通用しないのです。この戦略を活用するには、まず、自社の業界・市場を詳細に分析し、「戦略の通用する範囲」を確認しなければならないのです。

では、マイケル・ポーターの「競争の戦略」が有効な業界は、どのような業界でしょうか。早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏によれば、「参入障壁が高くて、新規企業が参入しにくい」「大手2~4社が市場シェアの大部分を占める寡占状態」「各社が緩やかに差別化しながら、ガチンコ競争を避けている」といった業界と言っています。例えば、日本では、ビール業界(アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ)が該当します。各社は、「同業他社と差別化した製品・サービスを提供して顧客に追加価値を提供する差別化戦略」を寡占状態の中で実行しています。

つまり、業界には、リソース・ベースト・ビューで知られているジェイ・バーニーが提示した「競争の型」とでも呼ぶべき視点があり、その型ごとに適応できる経営理論が違うということです。「競争の型」が違えば、「そこで求められる各社の戦略」は異なります。各社は「競争の型」にあった「戦略」を実行する必要があります。

講師プロフィール

渡辺 晴樹

渡辺 晴樹 株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長

中小企業診断士。1978年株式会社マネジメントエンジニアリング研究所(現 株式会社エム・イー・エル)入社。2007年に現会社に転籍し、2010年より現職。経営診断や経営理念の立案、経営ビジョンの構築、経営戦略の策定、中長期経営計画・年度経営計画の作成及び推進支援などを専門とする。
著書に、「新規事業開発実践マニュアル」(日本実業出版社、共著)、「経営戦略フォーマット総集」(日本実業出版社、共著)などがある。中小企業大学校東京校の講師も務める。